幼稚園(認定こども園)で働くということは、子どもたちの長い人生の始まりの時期に立ち会うということで、とても深い意義を持ち、やりがいのある仕事です。
その職場としての園を知るために、元総社幼稚園では『MOTOYO MAGAZINE(モトヨー マガジン)』をスタートさせます。
元総社幼稚園を「人・働き方」と「文化」の両面から切り取っていきます。
その記念すべき第1回目は、そもそもの、元総社幼稚園の園のあり方の紹介。
題して「元総社幼稚園って?① 建学の精神を表す“けいしんしょうふく”とは?」
目次
歴史がある幼稚園なんです
元総社幼稚園は、終戦後間もない1952年(昭和27年)に、いまの総社神社の隣に開園しました。
令和4年には創立70周年を迎える歴史ある園です。当時の初代園長は総社神社の宮司で、近所の子どもたちを集め、神社の敷地でのびやかに遊んでいたそうです。
その頃の園児は60名ほど。
神社ですから神様に関する行事には熱心で、特に七五三参りなど、園長自らが祝詞をあげて、子どもたちの健やかな成長をお祈りしていました。
その5年後には園舎を増築。
さらに10年後の昭和40年代の高度成長期になると園児も200名ほどに増えました。
地域の幼児たちの遊び場と成長、教育の場としての任務を担ってきたのです。
1985年(昭和60年)には、区画整理事業のため、現在の地に園舎が移転して、10クラスからなる新園舎も完成しました。いわゆる幼稚園らしい園舎でした。
2015年(平成27年)に幼保連携型認定こども園に移行して、3歳未満児も預かるように。
現在の新園舎は昨年の令和3年3月に完成したもので、茶色をベースにしたちょっとおしゃれでシックな外観です。
長い歴史を持つ園ですが、時代に合わせて進化を続けています。
時代に合わせた“5本の柱”で
そのような背景があって、園の教育・保育方針は
「心身ともに健康な子ども」
「思いやりのある子ども」
「考えて行動する子ども」
の3つが生まれていきます。
「園の教育方針は、その時、その時代、幼稚園ができてきた時代の中での情操教育と言われる中では割と一般的な教育目標だったと思います。もちろん今でも通用する大事なところだと思います。それを踏まえて、じゃあどこに力入れていくの?ということで、『5本の柱』を具体的に出しています」(園長)
『5本の柱』とは以下のものです。
- あそびを中心とした学びを重視する保育
- 食育からの学び
- 共生(インクルーシブ保育)
- ICT化の促進
- ヘルスケア
例えば、“ICT化の促進”とは、情緒を育てる幼稚園において少し意外な言葉かもしれません。
これは、職員間における業務のICT化とのこと。
職員間の連絡は園内だけで使える共有ソフトグループウエアを使って行われています。
掲示板やメール機能もついていて、ヒヤリハットの危険な情報なども即座に共有できるそうです。
今年度からは園のお便りもデジタル化。
新型コロナの影響で、紙でお便りを出すのがためらわれる状況になり、保護者の方にもスマホアプリを導入してもらい、お便りや連絡事項はすべてそこで行われるようになったそうです。
元総社幼稚園では10年くらい前からこの仕組みに取り組んできたそうです。
そして、この『5本の柱』の中で一番、元総社幼稚園らしさを表しているのが共生(インクルーシブ保育)かもしれません。
共生(インクルーシブ保育)の考え方
園長先生は話します。
「やはり、共生とは、インクルーシブというところにも入れているんですけど、『共に一緒に生きていく』ということです。今もいろんなところでSDGs.と言われていますが、脱炭素社会とか環境問題も含めて、それだってやはり大きく言えば自然との共生ですよね。われわれ人間だけじゃないですものね。もちろん、人間同士ともに生きるなんて当たり前のこと。地球規模で共生をしていかなければならないというところで、われわれだけがよくて、という独りよがり的な物事の考え方ではなかなか難しいんじゃないですかね」
と園長先生の見る世界は広い。
ともに生きること、は、相手に思いを馳せること、相手のことを考えることにつながります。
例えば、元総社幼稚園では発達に特性のあるお子さんの保育・教育も、他のお子さんと一緒のクラスで受け入れています。
「発達に特性のあるお子さんをどうしても区別しがちです。同じ学年だけど、1人加配の先生をつける、付けたら専属でつける、など、別にしがちなんです。でもそれってどうなの?保育者や園側の都合で子どもを分けるってどうなの?と。子どもには一緒に学ぶ権利があります。あくまでも子ども主体で考えれば、子どもたちは別に発達に何かがあっても差別するわけじゃないんです。一緒になってやっていくとその中で学びあいをしていく。一緒に保育・指導をできる範囲であれば、基本的には区別しない。そこは学年が上がるにつれて子どもたちの方が率先して、教えたり、手を引いたり関わってくれます」
それでも、そうなる前は周囲からの反対も多かったそうです。
「「無理なんじゃないか」「大変です」いろいろな声がありましたが、それは誰都合なんですか?子ども主体で考えたら、どうなんですか、と言い続けて、10年位かかりましたかね。今はあまり言われなくなりました。」と園長。「やはりそういうお子さんたちもだんだんと成長して社会に出ていく。いろいろ段階踏んでいけば、実社会ってそんなに甘くはないですよね。実際に。だとしたらこの年代はしっかり見て行く。いろんな意味でお互いいい影響受ければいいかなって思います」
『共生』の精神のもとに、ともに生きる教育・保育を目指す元総社幼稚園。
でも、それが働く人にとっていいかは別、と園長先生は言います。それでも、理想を追い求め、できることをしていきたいと日々歩み続けています。
『5本の柱』のそれぞれの取り組みは、今後も折に触れて紹介していきたいと思います。
次回は、<教育の目的>ワクワクする園 について紹介します。