もうすぐ創立70周年という長い歴史を持つ元総社幼稚園も、時代に即した取り組み、ニーズをとらえて進化していることを第1回の記事でご紹介しました。
第2回目は「教育の目的」についてお話しします。
「教育の目的」というと、また堅苦しい、眠くなる話?
と思われるかもしれませんが、そうではないところも元幼の面白いところなんです。
目次
未来へつながる教育
元総社幼稚園の「教育の目的」は、『教育・保育を通して望ましい共生社会へのひとつくりと、よりよい未来をデザインすることで社会へ貢献すること』です。
幼稚園教育の目的に「未来をデザインすること」とあるのは、なかなか斬新だと思いませんか!?
そのあたりについて、再び園長先生に話をうかがいました。
「『与えられたことをする』というのも難しいところはありますが、自分で考えて何かを作り出す、物を作る、仕組みそのものを考えていったりとか、何か、もっとクリエイティブな能力を、芽生えさせるような教育をしたい。子どもたちの力を、今すぐ伸ばすという話ではなくて、そこに何か焚きつけていけるようなヒント、刺激みたいなものを子どもに与えられたり、あとあとでもいい、後付けでもいいからそんな力になれるような種まきができればいいと思っているんです。」
「もちろん誤解のないように言えば、ただ遊ばせてるだけではありません。その中にはルールがあり、自分勝手に自由にふるまっていいわけではありません。その前提としてはメリハリのあるしっかりとした指導が行き届いてることと、子どもたちとの信頼関係があってこそ、遊びを中心とした保育が実現できると思っています」
「子どもが何か遊びに集中する、打ち込めるものを作っていく、見守りながら支援をする。遊びの中から保育者の適切な導きによって何かを発見する、見つけていく。これをやりますよー、勉強しますよー。そういうのではなくて、遊びの環境設定をするのは保育者でも、見つけるのは子どもたち、という寄り添いがいいのかなと思っています。」(園長)
なるほど、そういう中から子どもたちが創造性を身につけていく=未来そのものをデザインする力が養われていく、ということにつながるのですね。幼稚園児が未来をデザインすることを目指していくなんて、考えただけでワクワクします。
そのうえで、どんな人に働いてほしいのか
そのような園児を教育・保育するためにはどんな先生が必要なのでしょう?
先生になるハードルが高い気がしますが?
「私は、完成形の先生ではなくて、入ってから成長してほしいというか、その年齢や経験のキャリアパスに応じた理想の職員像に近づいていってもらえればいいと思います。研究データでもあるんですけど、最初、保育士になりたての頃はどうしても「教授型」で保育を行うそうです。新卒の学生もどうしても教授型で考えていますから。それで、経験を積んでいくほど「支援型」になっていくそうです。段々と先生自身も支援型を好むようになっていきます。最初からあまり「支援型」を押し付けてもなかなかできません。現場で子どもの声を聞いたり、先生同士で会って学んでいく中でできるようになっていきます。指導する先生の力も大きいですね。ですから、伸びしろのある人を求めています。」
幼稚園にも働き方改革が必要とされている
伸びしろはあるものの、入ってから成長していくためには園内研修はどうしても必要になってきます。ところが最近は研修そのものの時間がとりにくくなっていると言います。
「社会的にも働き方改革と言われ、メリハリのある働き方の工夫が必要とされてきています。幼稚園はどうしても行事等で土・日も出勤することがありますが、今はそれも好まれません。ですので、うちは土曜日は最低限の年間5日くらいの出勤に抑えています。平日は7時半から19時の間で8時間勤務するシフト制。不公平感のないように組んでいます。平日はなかなか園内研修を組む時間がないから土曜日に研修、と今まではやっていましたが、一斉に集まる研修は最低限にして業務の効率化を計り、土日出勤は最低限にしています。10年くらい前から働きやすさについては取り組んでいて、何とかやっていけそうだと最近実感も得ています。職員の働きやすさと保育の質の向上を両立させていくのが目標です。」(園長)
ただ、研修が減った分、実際先生自身が成長していくには時間が必要です。例えば新任からだんだんに経験を積んで行ったのち、勤務6年目くらいで、ある時急にグンと成長したと感じることもあると言います。
「新卒の先生には専門のメンターをつけて、あらゆる面からサポートしていく制度にも取り組んでいます。働いてくれる先生にも、負担がかからず無理しない働き方をしてほしいし、そういう働き方が求職者側からも求められていると思うのです」(園長)
ワクワクする園を作りたい
園長先生は続けます。
「そういう働きやすさは今は当たり前。そこだけではダメなんです。働きやすさとかは当然で、その上で、自分がそこで働けるモチベーション、存在価値がわかる、もしくは、誇りが持てる、この幼稚園が好きだ、と思ってもらわないといけないわけです。私は、自分も、自分の子どももここの園で育ちましたし、誰に何を言われようとここしかないわけです。では、職員はどうか。まずは自分の子どもをここに預けられる?と聞くわけです。自分の子どもを預けられる園でなければ、いい園とは言えないですよね。それには働いていて希望が持てるような楽しい職場でないと。」
元総社幼稚園は、2015年に幼保連携型認定こども園に移行し3歳未満児を受け入れるようになりました。当時は職員の増員や設備の拡充もあって、「大きな転換期を迎えました。実際、幼保の一体化は想像以上に戸惑いも多かったのは事実ですが、私は大きなチャンスが来たと思いました。もともと安定志向ではないんですね。その意味では毎年ワクワクしていたいと」
「来期の計画をどうするか話し合っていますが、職員の方からもああしたら、こうしたら、という提案も出てきて面白いですね。まずは職員がこの園を好きじゃないといけないし、楽しくないと。楽しく仕事をするにはどうしたらいいか、というところから始めたい。まず楽しむためにはどうするか。例えば、今、煉瓦造りの本格的なピザ窯を注文しているんですが、生地を練ってこねてピザを作って、炎でガーっと焼く。ガスの窯ではなくて、本物の薪をくべて炎でガーっと焼く。炎を間近で見たり、実際手を動かして、美味しそうな食べ物が出来上がっていくのを見ると子どもだけじゃなくて、大人もワクワクするじゃないですか。そういうのを危ない、無駄だという人もいるけど、うちはそうではなくて、経験させる。それもイベントではなく日常の活動の中で。これも大きな意味で食育にもなりますし、なにより楽しいじゃないですか。そんなことからいろいろやっていきたいですよね」
「私の仕事は、職員も含めてみんなが希望を持ってワクワク楽しくなるようなことを考えることかなと思っています。難しいルール、方針だとかありますけど、まず楽しく、仕事を楽しめること。それは真剣にやってるからこそ楽しめるんだろうと思うし、それがわかる人だったらぜひうちで働いてもらいたいと思いますね」(園長)
熱意を持って語った園長先生。
お話を聞いていてワクワク感が伝わってきました。