元幼のICT化ってどうなってるの? ~前編 ICT化の概要

園のこと。

いまや企業や社会のあらゆる場面でICT化が進んでいます。ICTとは「Information Communication Technology」の略で、日本語に訳すと「情報伝達技術」。IT(Infomation Technology・情報技術)を使って、コミュニケーションや伝達技術に重きをおいたシステムのことを指します。
元総社幼稚園では、教育保育方針の5本の柱のひとつに「ICT化の促進」を掲げています。10年ほど前から積極的にICTシステムの導入を進めてきました。なぜ幼稚園の現場にもICTが必要だったのでしょうか。前編はその概要について紹介、後編では実際のシステム運用について現場の先生の声をお届けします。

目次

そもそも、保育現場のICTシステムってなんだろう?

早速ですが、園長先生に幼稚園におけるICTシステムにはどんなものがあるか聞いてみました。
「園の保育・教育現場におけるICT化には2つあると思います。ひとつは園業務全体の効率化を目指すICT化。もう一つは子どもたちへの教育に活用していくICT。つまりバーチャルな世界を体験したり、映像を見てもらって体験を広げていくようなものです。こちらに関しては正直まだどのような取り組みが良いかわからない部分が多いので検討中です。
一つめに言った業務全体の効率化を図るICT化では、10年くらい前から積極的に取り組んでおり、最近は現場でも浸透してうまく運用できていると自負しています」
業務効率化のICT化では、職員間で使うグループウェアソフトや、保護者への連絡伝達に使う専用アプリなどが欠かせません。

元総社幼稚園のICT化


①業務効率化に役立つ「グループウェアソフト」

元総社幼稚園では各クラスに1台のタブレット、保育士2名に1台パソコンをシェアしています。それらを使ってグループウェアソフトを共有・管理しています。
機能としては、職員に向けたお知らせを表示する「掲示板機能」、指導案など園内で共有したい文書や資料、画像などを整理して共有する「ファイル共有管理」や、「勤務シフト管理」「スケジュール管理」などが搭載、整備されています。
園児に関する情報やヒヤリハットの情報など重要な事柄も全体で即座に共有できるため、連絡もれも防ぐことで、保育士の負担軽減にもつながっています。

②連絡帳機能もスマートに「保護者向け専用アプリ」

保護者への連絡は専用アプリを使っています。クラスに1台あるタブレットを使って各担任が活用してます。保護者のスマホなどに専用アプリをダウンロードしてもらい、園児名など情報を登録。毎日の登園降園時刻は保護者が打刻します。万が一打刻を忘れてしまった時は後から申請し直しもできるので安心です。通常の保育時間を過ぎると「預かり保育」扱いになり、自動的に延長保育料金を計算してくれるようになっているので月末に手動で計算する必要もなく業務軽減につながっています。また、毎朝の出欠席連絡もアプリ上で行えますので、朝忙しい時間に連絡の電話応対に追われることもなくなりました。
多くの保護者が楽しみにしている「園のお便り」もアプリ上でデジタル配信しています。『フォト通信』と名付けられ、日頃の活動の写真と担任からのコメントを週1回金曜日にクラスごとに配信。スマホでもあとで好きな時に見返すことができ、週1回という即時性もデジタルならでは、と一定の評価を頂いています。

保護者連絡アプリについては、後半の記事で具体的な機能、使い方をご紹介します。

ICT化に取り組んだ背景

元総社幼稚園では、10年ほど前からICT化に取り組み始めました。当時働き方改革が叫ばれるようになり、保育業界でも業務自体の効率化を図って、現場の負担を減らしていく必要性を感じたからです。
元総社幼稚園では、まずインフラ整備としてWi-Fiを敷き、園のどこからでもインターネットにつながるようにしました。今では当たり前と思われますが、近隣ではいち早く手がけた園の一つでした。登降園の管理から、保育費を手集金していたところを口座振替に、と一つ一つ取り組んでいきました。最初はデータ管理もフロッピーディスクだったものがだんだんとクラウド上に。数回の大きなシステム変更を経て、個人情報保護の観点も園内で徹底させ、時間をかけて定着させていきました。保護者の連絡用アプリも4年ほど前に導入。新型コロナの流行の前にICTを導入済みだったことで、保護者への連絡も安心してスムーズに行うことができました。これは大きな利点だったと言えます。

総務部がある幼稚園

もうひとつ、園で取り組んだことに、人材の専門化があります。元幼は、給食やおやつなど食の管理として管理栄養士さんが常駐している稀な園であることは以前の記事でご紹介しました。事務職としても現在、事務を専門に扱う「総務部」を構え、3人の事務職員さんが働いています。まだまだ園長先生や教務主任の先生が事務作業を行う園も多い中、画期的なことといえます。
総務部所属のOさんは、元幼に転職して6年目。補助金や各種申請業務などでの行政とのやりとり、会計業務など幅広い仕事を担当しています。
「前職は、県外のスポーツクラブでインストラクター兼事務職をやっていました。結婚を機に群馬に来ることになり、スポーツクラブで子供の指導経験もあったので、保育士資格はないのですが、子どもと関われて事務職ができる当園で働きたいと思いました」
「ある程度の園になると、いろいろな申請業務や電話のやりとり、外部との折衝も多いです。これらの仕事を現場の保育士さんがやろうとすると大変な負担だと思いますね」とOさん。
「現場の先生方は忙しい時でも園内グループウェアで連絡事項を送信しておけば連絡漏れも防げて、先生方も手の空いた時に確認できるので、メリットが大きいと感じています」

ICT化が、働きやすさと保育の質の向上を叶える

このような利便性がデジタル化のメリットといえます。もちろん、手書きのお便りや連絡帳には温もりを感じますし、必ずしも手作業や電話といったことが保育者にとって省力化になるかと言えば、そうと言い切れない部分もあリます。しかし全体で省力化できる部分は省力化することで、業務負担は減り、働きやすさを叶えることはできます。そして、その分の時間を目の前の子どもたちに深く向き合う時間にできると思います。何より子どもと向き合う時間を作るためのICT化なのです。社会のICT化が進む中で、保育業界だけアナログというわけにもいきません。その先の小学校でもICT化や授業のデジタル化が進んでいる中で、全体でのICT化が求められていくのだと思います。
新型コロナの蔓延によってテレワークの必要性や機能性が注目されたり、メタバースの世界が生まれるなど、情報技術は格段に進歩しています。今後は、園児の教育の現場にどのようにICT化を導入していくか、アイデアと発想を広げて進めていきたいと思います。

後半は、園のICT技術について、現場で実際に使っている先生のお話をお聞きします。

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